法治国家とリスク管理

 これに対し、日本政府は「平穏な目的とは考えづらい。なるべく来日は遠慮してもらいたい」(政府高官)として、入国を拒否できるかどうか検討に入った。

 政府関係者によると、入国の可否を判断する法務省に対し、首相官邸から「拒否できる合法的な理由を見つけるように」と水面下で話があったという。政府高官は「サミットも控えており、混乱は未然に防いで当然だ。報道や集会の自由への侵害と批判される理由はない」と主張する。

リスク管理の考えからすると非常に分かるんだよね。
どう考えも、ただの聖火リレーの取材で入国するとは考えられないんだものね。
国家いや、行政として聖火リレーを平穏無事に通過させるってのは切なる願いでしょうし――。
そりゃ、公務員だって人の子ですし、思うことはあったとしても、業務をこなすってのが使命ですからねぇ……。
どこぞの国の民衆デモみたいに国家が黙認ってわけには行かないのですよ、日本は法治国家だから。
そういった意味で、国家としては明らかに真っ当な目的で入国していない犯罪者予備軍の入国というリスクは背負いたくないわけです。オウムの監視も教団の信者全員が犯罪者ではないけど監視は行われた事例もあります。
でも、法治国家だから超法規的な事は取れませんし、合法的な理由を見つけて! ってのは法治国家内でのリスク管理としては致し方ないのかなって気もします。
ここで、超法規的な手段で入国を阻止するのなら非難されるべきだし、形だけでも正規の手段を用いてリスクを軽減するってのはある意味社会正義とも思えるんだよね。
 
個人的に、国境無き騎士団――あ、いや国境無き記者団の理念とかお題目は共感を覚えますけど、その手段がエレガントではない奇矯な方法なので、かの団体を2chやブクマの人とは同じに見えないのですよ。(彼等の大半は、賛成しているようですが)彼等は果たして入国を諸手を挙げて歓迎できるような団体なのでしょうか?
中国が悪だから、それに対抗する勢力は正義! なんて単純な考え方は持っていません。
琴子は片眼を潰した正義には興味ないのです。

彼等の取っている手段は、己が信念に忠実なだけで、正義ではないと思います。目的に対して手段が正当化されるのは法治国家では許されないことだと思います。
 
大体、ジャーナリズムの真の理想は「正義を謳う」事ではないはず。
ジャーナリストの真の使命は「事実の伝達」にあると思います。
日本のマスコミが劣化しているのは社会正義を謳い始めたのが一番の原因でしょう。社会正義は社会が決めることであって一個人や一団体、一業界が決めることではないと思うのです。