MMOへの哀悼

母さん、僕のあのMMORPG、どうしたんでせうね?
ええ、夏、Lineageから他ゲーへゆくみちで、
谷底へ落としたあのMMORPGですよ。
 
母さん、あれは好きなゲームでしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり知人が辞めていったもんだから。
 
ゲーム付きのチャットという乗りでしたね。
人間関係を生成したり、結合する為のシステムだった。
そして、その人間関係をそのゲームから離れることを引き留め逃げれなくしていたのです。
そして、友人の撤退は連鎖を引き起こします。
他ゲーに移る者。エロゲーに走る者。みんなが帰ってくるのをじっと待つ者。
 
抑も、MMORPGの醍醐味は人間関係にあると思っていますし、そのポリシーはいまでも変らない。
もちろん、チャットだけじゃないですし。ログインしてレベルを上げて必要なスキルを取るのも楽しいです。
もう少し時間的余裕があるときなどは募集をかけて数時間パーティーを組んで遊んだりしました。
でも、それは一人でするゲームではなかったです。誰かと――知らない誰かと一時的に時間を共有する楽しみというのがありました。
だから、キャラクターも支援職を選んでいました。
レベルの低いときは誰かに助けてもらい。自分のレベルが上がってきたら誰かの支援をする。そう言う楽しみって言うのがMMORPGにはありました。
これもまた人間関係を生成したり、結合すると言うことです。本当の名前も生別も知らないけれど性格が良くわかっている人達との繋がり、ぬるま湯のような関係です。
 
母さん、ほんとにMMORPGどうなったでせう?
雨後の竹の子のようにぞくぞくと出てきたゲームは人間関係が希薄になっていると思います。
うたい文句が、ソロも可能。自動パーティー生成。NPCが戦闘を支援..etc.etc.
自分以外のプレイヤーは自分の周りの敵を持って行く敵か何かのような扱い。
はては、プライベートダンジョン。
MMORPGの技術が上がって思想は停滞したのでせうか?
自分以外のキャラクタは同じ人間が操作しているのは自明ではなくなってしまったのでせうか?
 
母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの韓国産のゲームと、
その中に僕が書いた
ギルド脱退のご挨拶という手紙を
埋めるように、静かに、寂しく。