53年問題判決文

久々に教科書に出したい位の論理的な名文だと思います。
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判決内容の是非はともかく、非常に論理的で美しいと思いました。

裁判の内容についてはこちらが詳しいです。

53年問題は著作権保護期間を50年から70年に延長した改正著作権法(平成16年1月1日施行)の解釈で起こった。
著作権法を所管する文化庁は、昭和28年公開の映画について「著作権保護期間が終了した平成15年12月31日午後24時と、改正法施行の16年1月1日午前0時は同時で、改正法が適用される」と説明。著作権は70年間保護されるとの見解を示しており、文化庁の見解が理論上、正しいかが争点となっていた。

裁判所の判断:

  1. 裁判申し立て者がアメリカであり「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」を締結している国であることを提示
  2. ベルヌ条約5条により、判断基準となる法律は日本国法(著作権法6条3号)になること
  3. 同じく保護の期間はベルヌ条約7条(8)により同じく日本国法が準拠となる。
  4. 平成15年法律第85号(著作権法改正法)により、期間が50年から70年に変った事実の提示
  5. 改正法附則1条は,「この法律は,平成十六年一月一日から施行する。」と明記されている。
  6. 附則2条は,「改正後の著作権法〔中略〕第五十四条第一項の規定は,この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し,この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については,なお従前の例による。」となっていることを確認
  7. 改正前の法律に於いて、著作権が切れるのは平成15年12月31日であることを確認(年による暦法的計算(民法143条1項))
  8. 保護期間が平成15年12月31日で切れたと判断するので、遡って権利が復活しないように定められた一般的法解釈により平成16年1月1日の法改正時点では切れたものと判断するのが妥当である。(民法140条規定=民法139条ではない事を指摘)
  9. 文化庁の指針はあくまで文化庁又はその関係者の見解を示したものにすぎず,本件改正法附則2条の解釈を示すものではない。(法判断は裁判所が行う事を明示)
  10. よって、改正法附則2条の適用関係に関する文化庁の上記見解は、従前司法判断を受けたものではなく、これが法的に誤ったものである以上、誤った解釈を前提とする運用を将来においても維持することが、法的安定性に資することにはならない。と明言する。


とまあ、論理展開の美しさはなかなかお目に掛かれないものだと思います。
PDFですが、是非一読していただきたい文章です。
仮処分判決(本訴には影響を与えないとされている)とはいえ、上訴して最終的な決着を付けて欲しいなとは思っています。