ちょっと気になっていたオービス事件。

秋田の男鹿のオービス最高裁まで行った事件の判決が先日出たのですが。
破棄差し戻しになりましたねぇ。

高速走行抑止システムによる速度測定結果の正確性について,何ら証拠調べを行わず検察官に釈明を求めたり追加立証を促すなどすることもなく,プラス誤差が生じないことの証明が十分でないとした原判決を,審理を尽くさず事実を誤認した疑いがあるとして破棄差し戻した事例

差し戻し事由は、刑事訴訟法第四百五条に該当しないと言う物でした。
いつもの三行判決じゃなかったのでPDFを見ると面白いかも?
 
ちょっと中学の公民レベルの話しですが、上告と控訴の違いがあるのです。控訴は第一審から第二審に入ることを控訴っていいます。一審、二審までは「事実関係の認定」が主な作業です。(刑事事件の場合)。んで、上告審では「法令審」という「前の決定に憲法の法解釈上の問題がないかを審理する」作業になります。

刑事訴訟法
第405条 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
1.憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
2.最高裁判所判例と相反する判断をしたこと。
3.最高裁判所判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所判例と相反する判断をしたこと。

今回の事例は、事実認定の問題でした。
テーマは「オービスは正確か?」と言うもの。
販売員やカタログの営業トークでは「マイナス誤差しか出てこない」と言う科学的測定装置としてはいささか疑問が残る装置だ!→だから、オービスの正当性がない状態で判断するのが変じゃないか?
っていうのが主張。
 
んで、今回の判断事由がちょっとオカシイ。
判決文のPDF4ページ目。

記録に照らすと,本件では,第1審公判で取り調べられた本件装置の取扱説明書
や証人の供述等の証拠により,本件装置による速度測定の正確度につきプラス誤差
は生じないことが一応立証されており

って所。主客が逆転しないかねぇ?
「取扱説明書や販売員の営業トークがあるんだから立証されてる」ッテ主張はオカシイと私は思ったんですが……。
二審の、求めはその営業トークが果たして信用できる物なのか?ってのが主張じゃなかったかな?
ま、ここは重要じゃないから良いか
一番重要なのが二審の手落ちな部分。
最高裁の言い分はこんな感じ

検察官の立証がなお不十分であると考える
なら,検察官に対して,プラス誤差が生じないことを客観的に裏付ける資料を追加
して証拠調べを請求するかどうかにつき釈明を求め,必要に応じその請求を促すな
どして,更に審理を尽くした上で判決すべきであった。

破棄差し戻しってのは、A,B,Cの3つの条件が重なってDと言う法律に触れるから有罪(無罪)だってのが基本的な2審の流れなので、今回はその中のAと言う前提条件(オービス機械的制度の妥当性を認める証拠)が1審では満たされていないので無罪って事だったのですよ。
だったら、二審でその妥当性を認める証拠を検察側に証拠として提示してもらえばいいジャン。ってのが最高裁の言い分。
んで、その部分は事実か否かの認定作業だから最高裁の仕事じゃねーよ!っていってるわけです。
(続くかも)