タニス・リー「銀色の恋人」

以前絶版で、それ故友人に貸していたのですが、帰ってこなかったので復刊したのを書店で発見。んで、購入しました。

銀色の恋人 (ハヤカワ文庫SF)

銀色の恋人 (ハヤカワ文庫SF)

話の内容?
一言で言うと、「過干渉な親から逃れるためにあがく、女の子のマザーコンプレックス脱却の物語」でしょうか?
タニス・リーも脂が乗っていた時期に書いたものですから、精緻な文でトラウマある人は受け付けないらしい(笑)。実際に友人にこれは無理!って人もいましたからねぇ。
いわゆる少女版の「ホフマン物語オランピア」見たいな感じ?「コッペリア」と言いましょうか?
ホフマン物語では眼鏡を掛けられましたが、銀色の恋人の方は「世間知らず」っていう色眼鏡を掛けさせられてる感じ?

<!-- Attention!! 以下――ネタバレ含む --> 
酷評を言えば、落ちがきにいらねぇ――。
ロボットと人間というテーマで基礎となるのが、「魂とは何か?」についての問題を提起するのに、なぜかアノ落ち。
アシモフだと有名なロボット三原則ってのがあります。キッパリとロボットの境界条件を決めて人間とロボットは別って分離をしたのに対して、ディックなんかはアシモフの対極にあって、人間と見まごう形態で、「人間が人間であるとはどういうことかを映し出す鏡」として機能させています。この二極の「ロボットの人間性・非人間性」と対となる、ベイリーさんの作品『ロボットの魂』と『光のロボット』の二作はなかなか味のある面白い装置を作り上げました。ジャスペロダス君の旅のように、「意識」という哲学を持ってきた所が面白いですね。
しかし、タニス・リーはフタ味くらい違います。いきなり「魂はあるよ!派」な感じ? ってか、こっくりさんはネーダロ(笑
まぁ、幻想文学出身の作者ですからSFを期待しちゃいけないのでしょうけど……。
てか、SFってジャンルで良いのかいまいち悩む境界作品かも。

  
あ、あと――
「生身の男より全然いいじゃん!!」っていう欲望に忠実すぎる腐女子ちっくな感じがあれだ。男同士なら幾らでもエグイ表現できるっていう(いわゆるヤオイ系)同人サークルを彷彿させる感じが評価が分かれるところかもしれん。
 
ついでに言うとだ、表紙が変ってしまったのが時代を感じさせられた件。
前の表紙も良かったなぁ。