47th氏からコメントを頂いたので

やっぱりコメントとかTBとかって、活力になりますね(笑)
このサイトはTBとコメントを糧にしています――宣伝はさておき。本日付の氏のサイトで新しい記事があったので拝見
ふぉーりん・あとにーの憂鬱: 「正義」のコスト:コメント・TBありがとうございました
M&Aの弁護士としてのポジショントークなのですが、私は私で滅多に出さない経営者としてのポジショントークをしてみようと思います。

私のようなIT界のニッチ産業を謳っている小さい会社の経営者としては、今回のような事例は、いささか興味を持ってウォッチしております。
企業主たるもの業務の安全を図りつつ最大効率をはじき出すために行動するわけですが、ニッチ産業という物は新しいビジネスモデルを描かないとやっていけません。
新しいビジネスモデルとは聞こえが良いですが、つまるところ「前例の無い商品やサービスを提供する」と言うことなので、解釈によってはグレーゾーンに成る場合も発生するのでは? と言う危機感を今回は切実に感じたわけです。
今回のは「風説の流布(158条)」という逮捕らしいことは解ったのですが、もちろん軽い罪じゃありません資本主義経済の世界で、その根幹を揺るがす事になりますから罰則規定はかなり重いです。「財産上の利益を得る目的で、左記の行為により相場を変動又は固定させ、その相場により取引を行った者は5年以下の懲役及び3000万円以下の罰金(197条2項)」、「左記の行為を行った法人に対して、5億円以下の罰金(207条1項1号)」と言った具合に罰則から見ても軽くはない罪なのがおわかりになるでしょう。
風説の流布に直接該当するのは「嘘の情報を流した」事が原因ですよね?
粉飾決算は商法規定だったはず。んで、意外と刑は軽く「100万円以下の科料」だった*1はず。理由としては脱税とは方向性が逆なので国に入るお金が増えてるからかなと思ったんですが……。
今回は、有価証券報告書に記載されたんだろうから先ほどの5億円以下の罰金に成るわけですよ(もちろん、5億円以下というのは国庫に納める額で株主等に与えた被害は損害賠償として支払わねば成りませんがね)
ただ、この事実が確定する前にマスコミが騒ぎ出したのは頂けないと思います。だって、これも風説の流布に当たるでしょうから*2
経営者が一番おそれるのが実は警察とかよりも口コミとマスコミの影響力なんですよ。そのへんのことを企業弁護士さんはどう考えているのか聴いてみたいところでもあります。
そう言った意味で、氏のサイトで書かれているように、企業と警察の間に立ってくれる弁護士という存在は心強いものだと思います。国家権力の前ではその国家権力の規定にある人が仲立ちをしてくれることで、円滑に進むと思うのですが、実務レベルでの法改定や旧態依然とした弁護士業界が動くことは残念ながらすまだまだ先のことかなぁと……。

もう少し経営者よりなお話

我々のような小さい起業家たちは一見「善良」であることが多い、社員のすべてが見渡せるような小さい事務所で会議をする「仁義に反する」とか「モラルに反する」と言ったような単語が頻出する事が多い。基本的には善良――。コンプライアンスと言うことに過敏でないとやっていけない、何故か?「経費がかさむから」海千山千のような語り口で話しかける営業マンを誰が信用するというのだろう? 騙されるのでは無いか? 犯罪の片棒を担ぐようなことに成らないかと余計な心配をしてしまい。信用を得るために要らぬ時間を取ってしまう。この業界時間を費やすというのは悪だ。革新的なビジネスモデルなんて言うのは幻想に近い、また、実現できたとしても数ヶ月もしないうちに真似される。他社には真似できないなんて言うのはあり得ない。ソフト開発に人手があれば不可能はないと言う意味と根底は似ている。如何に先行導入し他の会社が追いつくまで売り抜けるかっていうような仕事も多い……。
生き馬の目を抜くと言ってはアレですが、まさに土俵際で競り合っている所って多いと思いますよ?
そう言った中で時間と言うのが重要視され、時間というリソースのコストを如何に下げるかというと「予め信頼されている」という前提が生まれるのは自明でもあります。
じゃあ、信頼を得るためにはどうするの? って、話しになるわけですよ。うちは株式を公開しているわけでもないので何とも言えませんが彼が陥った暗い穴というのは想像できます。

彼が陥った暗い穴(想像ですが)

基本的にIT産業って自転車操業なんです。新しいシステムを開発する(開発コスト増)→完成(生産コスト増)→広告を打つ(費用増)→売れ出す(費用回収:でも少額)→世間に認知される(費用回収:少し増えてあとちょっとで黒字転換?)→同業他社:でも大手が参入(大手の資本力にはかないませんよToT:で、製品打ち切って最初に戻る)
大体黒字になったか成らないかで新しいビジネスモデルや製品を開発しないといけない。当然、利益は上がりませんよ商品売り出しても売れなかったら費用が増大するだけですしね――当然売れると思って作っても社会的に認知されなかったり、見込んでいた潜在的顧客層の洗い出しがうまくいかなかったりってあるわけですね。
通常やってると企業価値なんて上がるわけがないのですよ、じゃあどうやって上げるのかというと、資本主義経済は良くできています。株というのがあるのですよ。企業(株式会社)がお金を集めるためには3つの方法があります。物を売ることによる利益、借金(融資っていいます)、もう一つは株(増資)です。ホリエモンが取った選択は増資でした。増資をすることにより信用も増やし、雪だるま式に資金が増える。これを経験した彼の人はもはやパブロフの犬です。新製品・新サービスを提案→広告→マスコミにちやほや→増資する→株を買う人が増える。こうなってしまった以上この車輪にクサビを打ち込むのは躊躇することだろうと想像が付きます。
でも、企業自体の本当の意味での価値って変わってないんですよやってることは一緒――あるリミッタを超えると会社の価値自体も増えると思いますが、それはまた別の話……。
バブルの時代の土地転がしと何ら変わっていないんですよね、値段は上がっても土地本来の価値は変わっていないわけです。
そんな中で会社を大きくするには信用を担保に増資するしか方法が無かったんだろうなと思います。信用を担保にする以上信用を下げる行為この場合は赤字決算は躊躇してしまい。後から見れば解るだろう手法を用いて当面の信用を得たのだと思います。
彼の行った行為は許せませんが、これは、IT関連企業全体に潜む陥穽だと認識する必要があると思います。

他の企業は?

他の企業だって、似たような事例は含んでいるのではないでしょうか?
ただ、ホリエモンみたいに直接露見するような手法を用いてないってだけで……。
良くある方法が、新製品の紹介です。特にプレスリリースで画期的であり顧客層もかなり取れるぞ!って言う宣伝を打つわけです。実際問題、新製品や新サービスはその価値がまだ確定しているわけではないので、大風呂敷広げることも出来るわけですね――その新製品がどれだけ売れるか解らない状態でも株価ってのは上がるんです。
ダークゾーンではない会社の価値が上がったようにみせる一つの方法ですね――こういった手法で大きくしているIT企業も知っています。目に見えない信用の増やし方ですね。
ホリエモンは目に見える形でやっちゃった。だから捕まった、だが、我々はしてないだから大丈夫なんて言う考え方はもう古いと思います。
そう言った中で信用を元手にしてるIT関連企業はコンプライアンスへの取り組みをもう少し考えなければならない時代に突入しちゃったのかなとも考える訳です。

*1:大学の卒論のテーマだった。つまりウン年以上前の知識で語っています。

*2:この件に関しては、事実が確定していない段階で相手の企業を陥れようと(信用を下げよう)という意味合いでの発言です。実際に、風説の流布は「何人も(中略)有価証券等の相場の変動を計る目的をもって、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない」とあります。拡大解釈をすれば「会社の信用が落ちれば株価は下がる事を知ってて行った「未必の故意」に該当するんじゃないか?と言ういちゃもんは付けれると思います。※言葉尻を取られるのも対応に面倒なので捕捉