海の話し

数年前友人のEと海に海に行こうという話しになって、九十九里の方へと足を向けたのです。
海の危険に「離岸流」って言うのがあるんですが、昔からある現象ですから、地方によって呼び方も様々とあるようで、千葉の方だと「水脈」と言うらしいんですね。ほら、毎年の水難事故でニュースでもたまに言われる。「いつの間にか沖向きの流れに遭遇して流されてしまって、あわてて岸に向って泳いだけど力尽きて溺れてしまった」なんて話しがありますよね。あれを離岸流って言うんだそうです。
これからのお話が離岸流なのかそれとも心霊現象なのかは、Eの体験になりますので私は判断を停止していますが、非常に不思議な事件でした。
私もEもあまり泳ぎに自信のあるタイプでは無いので、大きい波が来ても足が届く程度の所で泳いでいたのです。
まあ、体力のない私は先に上がって飲み物を買いに行っていたんですが、友人のEはしばらく泳いでいたんですね。
しばらく買ってきたお茶など飲みながらEを待っていたんですが、なかなかEが帰ってこないので呼び戻しに波打ち際まで向ったんです。
ちょうど、波打ち際まで迎えに行ったらEも何か棒を抱えながら真っ青な顔で上がってくるんですね。


E曰く、
「さっきまで、腰くらいの高さの波打ち際で遊んでいたら、いきなり足を捕まれて沖へと引っ張られた」
んだそうで……。
「もがいても、もがいても立ち上がることが出来ず。必死になってそのへんに掴めそうなものを掴んだ」
「そうしたら、急に体が軽くなって肩ぐらいの深さの所で立ち上がることが出来た」
と言うことだそうです。


そして、
手に持っていたものを見ると“卒塔婆”でした。
早々にその日は泳ぐのを切り上げて、近くのお寺で手を合わせて帰ってきたのでした。