この物語に教訓は無い、もしあったとしてもそれに対する解決策は示していない サキ

昔々、とある鄙びた地方都市のデパートの話し。
デパートの最上階には決まって、レストラン街があります。
その街に住んでいた住人は、このレストラン街を贔屓にしていました。
レストラン街にはいろいろなお店が並んでいました。
ラーメン屋、お好み焼き屋、ソバ屋、和風料理、イタリアン、牛丼屋、カレー屋、喫茶店など様々なお店たちです。


ある日、牛丼屋が凄く美味しい商品の開発に成功しました。
メディアなどにも紹介され、少し離れた地域の人も足を伸ばして食事に来ました。


かつて無かった事態です。
この事態を見ていた他の商店主もただ指をくわえてみていたわけではありません。


他の商店主も、新興の牛丼という食べ物が流行っているなら、
自分の所も牛丼を始めてみよう。
と、考えました。


翌日には、ラーメン屋、お好み焼き屋、ソバ屋、和風料理、イタリアン、牛丼屋、カレー屋、喫茶店それぞれのお店が模様替えを行って牛丼を販売するようになりました。


するとどうでしょう?
初日から数日は、新装開店と言うこともあり、
興味を持ったお客さんがちらりほらりと入っていましたが、
やがて、閑古鳥が啼くようになりました。


話題のお店で食べたいお客は、話題のお店で食べられれば、
わざわざ他のお店で食べるという気にはなりません。


また、今まで贔屓にしていたお客さんも
「あれ? カレー屋が無くなっている。あそこの本格窯焼きナンが食べたかったのに……。」
「そば屋は何所に行ったんだ? 天ぷらソバが絶品だったのに」
カルボナーラが食べたかったのに……。」
特に牛丼が好きではない、贔屓のお客さんもみんなが牛丼屋産になってしまったことで、
ガックリと肩を落とし、帰って行きました。
二度と彼らはこのレストラン街にくることは無いでしょう。


最後に何が残ったのか?
元々、牛丼が好きなご贔屓の人が件のレストラン街によく行くようになりました。
たまにはTVで紹介したお店も食べ続ければ、すこし食傷気味になります。
このレストラン街なら、ちょっと隣のお店に行けば牛丼が食べることが出来るのです。


ただ、日々数人しか来ない店舗に明日はあるのでしょうか?
売り上げが上がっていないお店からどんどんと、
廃業していきます。
空き店舗が、1店、また1店と増えるごとに商店街はゴーストタウンとなるのでした。
ゴーストタウンと化したレストラン街に人は寄りつきません。
最後にはメディアで紹介された牛丼屋さんも潰れてしまいましたとさ。
どっとはらい