アーサー王物語

実はアニメ版Fateはみています。
アーチャー死んじゃった(´・ェ・`)
でも、あの決めポーズは思わず爆笑してしまったです。
物語本編はセイバールート確定なのでしょうか?


閑話休題――
昨日から、自宅の蔵書倉庫(部屋に置ききれない本は倉庫にあるんです)。
岩波版「中世騎士物語」を取り出して読んでみる。

中世騎士物語 (岩波文庫)

中世騎士物語 (岩波文庫)

アーサー王物語関連の物語が多く書かれているのでオススメではあります。
マビノギオンなども入っているので中世の物語原型をみるのにも適した素材といえます。
実は2回目の再読なのですが、非常に興味深かった「ガウェインの結婚」について知ってる人も多いと思いますが、軽くご説明――
ガウェインって人は円卓の騎士の一人で、アーサーの異父姉モルゴースとロージアンとオークニーの王ロトの長男ということでアーサー王の甥に当たります。物語の立場的には、よく出る人だけど、ラーンスロット*1の当て馬的存在で結構微妙なポジションに居ます。


ガウェインの結婚の物語に語る前に前後のお話をしておきましょう。
アーサー王が40代の頃の話しです。
そのころはアーサーも宮廷で民衆のもめ事を受けて裁判をしたり決済をしたりと事務的な仕事が続いていたある日のことです。
一人の乙女が訴えにやってきました。内容としては「自分の領地が邪悪な騎士に奪われ、また恋人も捕虜にされてしまった」とそんな話――。
アーサー王は、自分の領地でそんな不法なことがというわけで、愛剣エクスカリバーをひっさげてただ一人で、その邪悪な騎士の城に乗り込むわけです。


アーサー王の世界は魔法が跋扈している世界です。アーサーが件の城に乗り込んだ瞬間魔法が発動して、アーサーの勇気を挫くんですね。
そこに、邪悪な騎士が登場して、いとも簡単にアーサーを捕虜にしてしまうのです。
ところで、中年以降のアーサーは結構ヘタレです。
早速命乞いなどをするわけですが、邪悪な騎士が言うには「この1年のうちに問いの答えが見つかったならば、おまえを許そう。もし、見つけられなければおまえの王国をそっくり私が貰おう。よいな?」よいもなにも、とにかく助かりたいアーサーは、この条件を承知します。そして、その答えを探して遍歴の旅にでるんですね。

どんな問いだったかって?
「すべての女性がもっとも望むことは何か?」


実に深遠な謎ですねぇ(笑
と、言うわけで謎を解を求めるために、アーサーは旅に出て行く先々で女性に問いただすわけです。
ある女は「美貌」というし,また別の女は「健康」。他にも、富、立派な騎士の夫、子ども、若さ、恋人など、ありとあらゆる答えが返ってくる訳です。
1年もそろそろ過ぎるかという頃、答えが見つからないアーサーはそれでも城に向かって馬を進めて居たわけです。途中、木深い森の道すがらに醜い老婆が座っていたのです。
アーサーはそれを無視して馬を進めたところ老婆はアーサーを叱りつけました。
「ちょいと、そこの騎士よ。立派な鎧に身を固めてさぞかし高い身分の者かもしれんが、レディを無視して通り過ぎるとは、無礼ではないか!」って、騎士道って意外とメンドイのですよ……。
アーサーはあわてて馬を降り、非礼をわびます。
機嫌をなおした老婆はアーサーに「あなたの探しているものを、私は与えることができる」と言うのですよ。
但しこれにも条件が付きます「若くて健康で立派な騎士を自分の夫に欲しい」という条件です。後先ないアーサーはまたもこの条件を呑むわけです。
老婆と別れた後、邪悪な騎士の居る城へ到着して1年前の問いに答えるわけです。今までアーサーが聞いた女性のもっとも望むものをいくつも羅列するわけですが、邪悪な騎士は全て「違う」と言っていくわけです。そして最後に残ったのが、件の老婆から教わった言葉を発するわけです。
老婆の語ったすべての女性がもっとも望むことって何だと思います?


「自分の意志を持つこと」


アーサー王伝説が誕生したのがおおよそ12世紀から15世紀、つまり700年も前にこの言葉を伝承として伝えることが出来たというのが、驚きです。
邪悪な騎士は悔しがりながら、その言葉を教えたのは自分の妹だと言うわけです。


前置きが長くなりましたが、ここで本題のガウェインの結婚の話しに繋がるわけです。
ガウェインはアーサーの部下って事は先述の通りですが、意外と忠義心の高い奴なんですよ。
アーサーが件の老婆と取り交わした約束を守るために自ら名乗りを上げる程度に。
自分の甥っ子が何もあんな不吉な老婆とって辞めさせようとするのですが、ガウェイン君も王の為にって聞きません。結局結婚するわけですが、仲間の騎士たちが暗い森から老婆を連れてきて、宮廷で結婚式です。
他の騎士たちは、みんなおもしろ半分でガウェインを揶揄するわけです。
当たり前の話し、新婚の妻は世にも醜い、顔をそむけたくなるような老婆ですからね……。
ガウェイン君も、何の愛もあるわけじゃないし。
王を嘘つきにしないための結婚ですから、ちっとも幸せな気分になれない。
だから、式だけで披露宴はなし。

やがて、お約束の夜がやってきます。
当のガウェイン君は花嫁に背中を向けて「はぁ〜っ……。」って、深いため息ばかりついてるばかり、まあ、気持ちもわからないではありませんが^^;
「我が夫よ! 新婚初夜だというのに、わたくしを見ようともなさらず、つまらなそうにため息ばかりついておられる。何故ですか」
って老婆は言うわけです。何故ですかってねぇ――言わずものがなだと思うのですが……。

ガウェイン君も相当ハッキリした正確らしく素直に正直に答えるんですね。
「理由は3つ、一つ、あなたが老人であること。二つ、あなたが醜いこと、三つ、あなたの身分が低いことだ」


ガウェイン君――キミ、ハッキリ言いすぎ! とか思いましたが(笑)
その言葉に対して老婆が反論します。
「一つめ、確かに私は年老いているがそれだけ人よりも思慮が深く知恵に富んでるということです。決して、老いていることが悪いことではありません。二つめ、妻が醜いことは夫にとって幸運です。なぜなら、他の男が言い寄るのを心配しなくてもよいからです。三つめ、人の価値は生まれや身分で決まるものではありません。魂の輝きによるものです。」
含蓄に富んだ言葉ですねぇ――

元は素直なガウェイン君、そんなもんかなぁと納得して後ろを振り返ると、老婆は居らず、見目麗しい乙女が居るわけですね。
老婆、老婆と思って居たのがいきなり見目麗しい乙女ですよ。
ビックリしたガウェイン君「お前は誰だ!」って言うわけですね。


そうすると乙女はこう答えたわけです。
「実は私は悪い魔法使いに魔法をかけられて老婆の姿に変えられていたのです。二つの願い事がかなわなければ、もとの姿に戻ることができません。立派な騎士を夫にするという一つの願いがかなえられたので、私は一日の半分をもとのこの姿で過ごすことができるようになりました。もとの姿でいられるのは、昼がよいですか、夜がよいですか。わが夫よ。お選びください」


よくある話しですね、何かに変身させられてて「誰かに愛されると変身が解ける」ってやつ。
いつも思うのですが、カエルが好きだったのにいきなり興味も湧かない王子に変身されたら愛情冷めませんかねぇ*2


それは、さておき当のガウェイン君は「その美しい姿は、二人だけの夜の時間に見せてほしい。できれば、その美貌を他の男たちに見られたくはないものだ」というわけです。意外と独占欲強いのねぇ……。

それに対して花嫁は「女というものは、他の殿様方やレディとお付き合いするときに美しい姿でいられたら、それはそれは幸せなんですよ」と言うわけです。
成る程、ありますねぇ……。そーゆーの見栄って言うの?

ガウェイン君は悩んで、しばらく考えた後こういいます。
 「おまえの好きにするがよい」

 すると、花嫁が満面の笑みをうかべて言ったんだ。
「たった今、二つ目の望みがかないました。私は昼も夜ももう老婆に戻ることはありません」
 

わかりますね。二つ目の願い事がなんだったか。
 「自分の意志を持つこと」


彼女は,夫ガウェインによって自分の意志を持つことを許されたということ。
それは、当時としても画期的なことだったのでしょう。


これが「ガウェインの結婚」の物語。始めて読んだときには衝撃を受けた話しです。
僅か5ページに満たないお話ですのでパラ読みでも読むと良いかもねー

*1:この人も、円卓の騎士の一人「アーサ王と円卓の騎士たち」では、主人公的扱いを受けている人です。出自がフランスであることからフランス系の物語では人気の高い人物詳しいことは、「フランス中世文学集」などをみると良い

愛と剣と フランス中世文学集 2

愛と剣と フランス中世文学集 2

*2:あ、別にカエルフェチとか、カエル好きってわけでないです。あしからず。